青い花 濃いピンクの花 

6月22日 写真とブログ担当の永田です。

今回は、今年の開園シーズンを通して、花菖蒲を見てきて、思ったことを書いてみます。


昔、もう20年以上前、その当時で、花菖蒲は改良されつくしてしまって、今後さらなる展開はないのではないですか?と言われたことがありました。その時は、自分も半分はそう思っていました。花菖蒲は江戸時代より300年も改良されてきた花で、花の大きさも原種とは比べ物にならないくらい大きくなっているし、2000品種もあるし、花型も秀麗で、もうあとどこを改良するんだ・・・と。

でも、それからいままで改良を続けてきて、園内にはその当時無かった品種が増え、それらの品種が織りなす園全体の景色を見て、あの当時とくらべ、確実に花菖蒲園の色彩が変わってきたなと、今年の園を見て思いました。

その当時は、花菖蒲は一輪の花の美しさ、秀麗さがまず大切と考えていました。趣味家の多くも肥後系の極大輪花に注目していました。つまり花一輪を見ていたわけです。

でも、花菖蒲園でこの花を見続けるうちに、花菖蒲園に植え付ける品種は、まず性質が丈夫で草丈が高く鮮やかな花色の品種が大切だと思うようになりました。

また、花菖蒲には藤色、ピンク、白地に絞り、白地に紅紫覆輪など中間的な淡い品種も多く、近くで見れば微妙な色彩が美しいのですが、それを品種が違うからと花菖蒲園に多く植え付けると、遠目には全体に白っぽくなって見え、ボケたような花菖蒲園が出来上がってしまうのです。

遠目にも美しい濃い色彩。特に明るく濃いブルーや濃いピンクの、鮮明な美しい色彩の品種が少なかった。ですからそういう品種を多く作りたいと思い、10年くらい前からその当時にあった品種をもとにして交配してきました。

花菖蒲の品種改良はそれほど難しいものではなくて、交配してタネを採って翌年い播けばその次の年には咲きますが、たくさんの実生花の中から良い個体を選抜して、その一株をたくさん増やして、花菖蒲園で満足に色彩として目立ってくるまで、およそ10年くらい掛かります。

ほんとうに気の長い仕事です。

10年前、濃いブルーや濃いピンクの品種が園にたくさんあったら、もっと美しい園になるな・・と思って交配しだした結果が、今年になってやっと徐々に表れてきました。

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そして今年も、そんな思いで交配しておいた中から、青い美しい花が咲きました。

この花は花の大きさは13cmくらいで、花菖蒲としては中小輪。花型も単純です。でも、とても美しく深いブルーで、そして何より草丈が高く、最初の段階ですでに10本程度に増えているほどよく増える個体でした。

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上の花の開花2日目の様子。

花菖蒲はどんな品種でも、咲いてから時間が経つに従って花が大きく伸び広がる特徴があります。でもその分、開花初日の濃い色彩は薄まってゆきます。


こういう花型の平凡な花は、昔の、肥後系全盛の時代ではあまり良い花とは考えられなかったと思います。その当時は肥後系の整った気品ある花型が美花の基準でした。育種家の先生も、整った花型を第一に考えていました。ですから逆に園にたくさん植えられた場合の美しさを考えて育成された品種が少なかった。

当園の社長の花菖蒲の師の故平尾秀一先生が、昭和40年代に鮮やかな色彩の江戸系の品種に着目しだしたのが、始まりでしたが、それでも花型の良さを求めていました。

この花は、花型よりも丈夫さとか草丈の高さ、そして何より色彩の鮮やかさという発想の上にある花です。この花が1000株に殖え、園にたくさん植えられたとき、その部分は鮮やかな青い色で埋まります。

それを想像するととても楽しくなります。そんな意味で、今年いちばんの新花でした。

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同じ思いで選んだ青い花。こっちの花は直径が18cmほどもある大きな花で、花も八重で一輪の見栄えは良いで一般にも好まれそうです。でも、こういう花は一面に咲きそろわないことも多いので、数年作って殖え方とか群れて咲いた時の存在感とかを見て行かないとと思っています。

それで結果、後になって、ダメだ・・ということで処分してしまう場合もあります。

でも、色はとてもきれいでした。

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これらの深いブルーをさらに美しく見せるのが、濃いピンクの花ですが、濃いピンクの系統は草丈が低く性質の丈夫でない肥後系を元に育成されているため、その性質が抜けません。丈夫なものを作ろうとすると花色が薄いものになりがちなのです。

この写真の花は、今年の実生の中から咲いたとても濃いピンク。でも草丈がやや低いので、結局取り上げませんでした。

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こちらは、5年くらい前に選抜した濃ピンクの個体。一株が今40株ほどに殖えてきました。数年かかってここまで殖えて来るわけですが、ここからは殖えるペースは速くなってきます。

このあたりが不思議で、100株程度まで殖えるのに、かなり時間が掛かります。でもそれからは順調に増殖するんです。

これまでの地植えの向く濃いピンクの花より、さらに濃いピンクの花で、この花がいちめんに殖えて咲いたら、とても美しい光景が広がると思います。


これら、いままで10年以上をかけて行ってきた花菖蒲の改良は、鮮やかな色彩の青い花と、性質の丈夫な濃いピンクの花で、花菖蒲園をより鮮やかに美しいものにするという観点から行った改良でした。

別に難しい育種技術を用いたわけではなく、自分が気に行った花を選んで来ただけです。でも、20年前に、花菖蒲は改良され尽くしてしまって、今後新しい展開は見込めないと言われたことが、今はそうではなかったと思っています。

改良にはほんとうに様々な方向があるので、それに向かって地道に進めば良いわけです。改良され尽くした・・と思わなければいいのです。

私は、花菖蒲の改良なんて誰でもできると思っています。でも実際はそういうことが可能な環境にいたことが大きいのです。その環境のなかで、地道に楽しみながら作ってきただけなので、それによる気概とかそれで自分の城を作りたいとか、全く思っていません。花菖蒲管理の片手間なので、育種といっても別段余計に費用も掛けていません。そしてそういうことがこれまで出来たことは、とても幸せだったと思っています。

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※ 6月8日撮影

来年は今年よりさらに深いブルーや濃いピンクの花を園にたくさん植えて咲かせようと考えています。そして引き締め役の鮮やかな黄色も。7月からの植え替えの作業はとても辛くしんどくて、作業してもらうスタッフに毎年申し訳なく思います。暑い真夏の季節は作業も休み休み、熱中症にならないようにしなければなりません。

そうした苦労があって、一年に一度、ご来園していただくお客様に喜んでいただいています。

コメント

Re: タイトルなし

読んでいただいて、どうも有難うございます。こちらは他の園の記事をほとんど見ていなくて申し訳ないです。
やっぱり「続けること」でしょうか。ネリネとともに、地道に続けてきました。来年はさらに美しい園になると思います。またそちらへも(ご要望があれば)良い品種をお出しできるよう努力いたします。

花菖蒲園向き品種は、一鉢ずつ一輪ずつを愛でる肥後花菖蒲の対極と言うべきものでしょうか。
今回の記事、非常に興味深かったので、神戸花鳥園公式Facebookページでも紹介させていただきました。お客様の目を楽しませる花の背景にあるこのような小さな(しかし絶対に他には代え得ない)ドラマは、目の前の花をより魅力的に見せますし、だからこそもっと多くの方に知っていただきたいものですね。

  • [2011/06/23 15:59]
  • URL |
  • KS@神戸花鳥園
  • [ 編集 ]
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Re: 今日のエントリー

つくよみ さま

コメント有り難うございます。またこのブログを遡って読んでいただき、たいへん嬉しいです。

花菖蒲は、咲いているときは一瞬だけ美しいですが、なんと言っても夏場の植え替えの作業が辛く、株分けしてやらないとうまく育たず、翌年美しい花菖蒲園にならないので行いますが、暑い季節に大きな株を掘り上げるのは、ほんとうに辛い作業です。

でも、その甲斐あって、今年は大勢のお客様に来ていただき、ブログも多くの皆様に見ていただいたので、良かったと思っています。

花菖蒲園はそろそろ終わりですが、また来年もよろしくお願い申し上げます。

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